2021.04.20

【セミナー開催レポート】2021年3月25日開催、残る人材で進むか、新しい人材で進むか。業務の可視化は「いつか」ではなく「明日から」へ。

Meeit.bizが送る日本人向けセミナー。今回のテーマは「残る人材で進むか、新しい人材で進むか。業務の可視化は『いつか』ではなく『明日から』へ」。COVID-19の感染拡大は日系企業の業務遂行に大きな影響を与えています。前任者が本帰国したのに新任者が来ない、前任者からの引き継ぎができなかった、人材補充がままならない。業務が思うように進まず、トラブルを抱えている企業がいま打つべき手とは何なのでしょう。本セミナーでは、スタディストタイランドの代表、豆田裕亮氏が自社での経験を踏まえて、業務可視化の必要性と進め方を具体的に解説します。

業務可視化

■マニュアル作成はタスクである

スタディストは画像や動画などを使って伝わりやすいマニュアルや手順書を閲覧・編集・管理できるサービスを提供するベンチャー企業で、今年で創業12期目を迎えます。3年前にパートナー企業のサポートという位置づけでタイに進出を果たし、2018年8月に現地法人を設立。去年2月にはBOIを取得しました。

現在、スタッフの数は6名まで増えていますが、豆田氏が最初に採用したのは1名のタイ人。管理スタッフとしての採用でした。

こちらに来てから半年ほどいろいろな会社を訪問しましたが、その過程で、『タイ人スタッフの作業の品質が安定しない。』『データが散乱している。』『スタッフが何をやっているかがわからない。』という声を多数聞きました。特に管理部は少数であることが多く、やめてしまうと管理業務の中身がまったくわからず、困ってしまうというケースも多かった。安定した管理部の必要性を痛感しました。

管理部は売上が立つ部署ではありませんが、ここが正しく回らなければ他の業務に支障をきたします。如何にして安定した作業品質を担保すべきか。前職で管理業務経験のあるスタッフを採用した豆田氏は、まず管理業務や作業をこなしながらマニュアル作成も同時に進めるように指示を出します。

「ある程度作業ができあがった後でマニュアルを作ってほしいと依頼すると、プラスαの作業になるため、進まないことが多いんですね。そこで最初からマニュアルを残すように指示して、マニュアル作成が自分のタスクであるという認識を持っていただきました。」

請求書や契約書の作成、作成した書類を格納するGoogle Driveの場所。スタッフは入社の翌日から、普段の仕事の流れそのものを動画でキャプチャーしました。これはPCの作業だけにとどまりません。例えば、顧客から届いた請求書はオフィスのどのファイル、どの棚にしまうのか。そうしたリアルの作業もすべて写真に撮影して記録し、動画や写真には簡単なテキストを加えました。

「ここで大事なのは最初から完成度を求めないこと。自分がやっていることを特に考えることもなく撮影し記録に残してもらうことが重要なんです。仮に間違いや抜けがあっても後から更新すればいい。ただし、作業の正確さについては、顧問弁護士事務所や顧問会計事務所などからレビューを受けています。月末に社内で会計書類を作成していますが、会計事務所から指摘された内容は再度マニュアルに盛り込んでいます。そうするとマニュアルが肉付けされていき、必要十分な品質に近づいていくんですね。次の月の締めにもう一回見直せばもう忘れないし指摘もされなくなる。こうした業務の可視化はおそらくタイに進出したスタートアップでは一番早かったように思います」

 

マニュアル作成はタスクである

マニュアル作成はタスクである

■業務のブラックボックス化を避ける仕組みを構築

マニュアルの作成頻度は月に5〜6件。次第に作成ペースが落ち、最初にマニュアルを作り出してから約9ヶ月後、ペースが落ちきったところで「抜け漏れ抽出アクション」のスタートです。

「毎日作業した内容をリスト化してもらいました。リストアップした後、作成したマニュアルと突き合わせると空欄があることがわかります。これが、まだ可視化されていないブラックボックスの卵。次にこの空欄が一つひとつ埋まるように可視化していきます」

この作業をこつこつと続けていけば、週次、月次、年次のすべての作業が可視化されます。1年続ければ、週次や月次は10回以上も内容がブラッシュアップされることになるので、最終的には更新の必要がないレベルに到達するのです。

「可視化とかマニュアル化というと完璧なものを求めがちですが、そうじゃない。最初は50〜60%の完成度で十分。実施するたびに肉付けしていけばいいんです」

設立から1年半。緩やかに顧客の数が増え、カスタマーサクセスの対象企業数が積み上がってきたところで、豆田氏はカスタマーサクセスのスタッフ採用を考え始めました。

「しかし新しい職種なので、タイでの経験者は非常に少ないと予測。筋はよくても、採用後にうまく教育できるかどうか不安を感じていたところで、自社のサービスを使ってマニュアルを作成している管理スタッフのコンバートを思い立ちました。社員にとっては、カスタマーサクセスの方がキャリア的にも給与面でもメリットが多く、弊社としても社内に管理業務の経験者が増え、自社のカルチャーにフィットしている人材を起用できるメリットがありました」

ここで、豆田氏は業務のブラックボックス化を避ける仕組みの構築を図ります。具体的には、作業内容をラベルづけし、その作業が週次、月次、年次のルーチンなのか、イベントなのかを明らかにしていったのです。その結果、年次で58個の作業内容があり、その半数がルーチンワークであることが判明しました。

ちょうどこの頃、COVID-19の感染拡大で業務フローや内容を見直す必要に迫られた豆田氏は、新しく採用した社員にも加わってもらい、一つひとつの可視化された手順をみながら詳細工程を確認していきます。

「すると全体の21個の作業のうち、20個はワークフロムホームで可能であることがわかりました。もともとあらゆる書類に手書きサインをしていましたが、電子サインで問題ないかどうかを確認して中身を更新していったんです。最終的にオフィスでしかできないという作業は1つだけでした」

 

業務のブラックボックス化を避ける仕組みを構築

業務のブラックボックス化を避ける仕組みを構築

■反転授業を取り入れた業務の引き継ぎプロセス

新人スタッフへの業務の引き継ぎプロセスも示唆に富んでいます。ここで採用されたのは「反転授業」の考え方。あらかじめやること、知っておくべきことを先に勉強しておいてもらい、わからないことを質問してもらうスタイルです。

「質問した内容はすべてマニュアルに反映してもらいました。引き継ぎする作業については、やってない、やった、一人でできるの3つのステータスに分け、一人で月次ルーチンができるようになったら試用期間終了。この方法なら引き継ぎの試用期間中、「一人でできるように」マニュアルをすべて最新化できます。ブラックボックスを避けるために、属人化を避けたい工程については担当を定期的に入れ替えたり、繁忙期の激しい部署は他の部門のサポート・マニュアルを作成したり、新しいスタッフを採用するときには新スタッフ向けマニュアルを更新するゲートを設けるといった取り組みも実施しています」

まとめてみましょう。

まず、作業を進ると同時に記録を残すこと。そして、最初から100%のレベルを狙わず、業務の可視化と肉付け作業をぐるぐると回していくことが肝要です。

「仕事を引き継ぐとき、個人のノートを取るのが一般的ですが、大事なのはノートではなく手順を可視化・共有すること。そして、徐々に完成度を高めていくことです。愚直に可視化し、標準化し、引き継ぎの仕組みを作ってください。そうすることで、マニュアルは運用時に大きな効果を発揮するんですよ」

目的は可視化にあるのではなく、その先にある「効果」なのです。

■タスクの経験が少ない場合には

豆田氏の具体的かつわかりやすい解説を受けて、時間いっぱいまで参加者からはたくさんの質問が寄せられました。その中から2つの質問をピックアップしましょう。

まずは「タイ人スタッフは本当にこうしたマニュアルを作成できるでしょうか」という質問に対して、豆田氏は次のように回答しました。

「私もタイで会社を立ち上げたときに、『タイのローカルスタッフはこういうのは使わないよ』とよく言われました(笑)。本当に作れるのかという不安はわかりますが、必要であれば作るんですよ。マニュアルを作っておくと後から楽だよと、先の効果を説明するといいですね。年配のタイ人の場合、自分の担当業務がすべて丸裸になってしまい、自分に価値がなくなってしまうと考える人もいますが、『単純作業は若い人に任せて、あなたには将来、こんな仕事をやってもらいたい』と話すことが大事だと思います。キャリアアップとセットで話す必要がありますね」

ある参加者からは、「自社のタイ人スタッフはマニュアル化の経験が少ないが、それでもマニュアルは作れるのか」という問いかけがありました。この質問に対する豆田さんの回答は明快です。

「経験した作業でないとマニュアル化は難しいです。しかし、私だったら会計事務所にヒアリングしながらやってくれといいますね。実際に弊社の最初のメンバーは10ヶ月しか管理業務の経験がなかったので、質問をしながら手順を作ってくれました。大事なのは、わかる人に聞いて、自分が理解したように手順を作っていくことです。対象作業の経験がないなら知識を中に入れていく。そうすれば、その知識が社内の資産になる。全力で営業したくても管理部が安定しないと営業に専念できません。管理業務は会社の基礎。誰がやっても同じようにできる状態を作ることです」

業務の可視化は企業文化の変革そのもの。とはいえ、最初はスモールスタートで構いません。まずは作業を記録し、記録した内容を徐々に肉付けしていく。「マニュアルを使ったら仕事が楽になった」という成功体験が生まれれば、それが社内に広がり、やがては企業文化の変革にもつながっていくはずです。ぜひ、今回の豆田氏のお話をもとに業務の可視化に向けて踏み込んでいただきたいと思います。

これからも、皆さまのご意見やご希望を踏まえて、さらに充実した内容のウェビナーを企画していきます。今後のMeeit.bizの取り組みにぜひご期待ください。

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