2021.08.16

【セミナー開催レポート】2021年8月3日(火)開催 ポストコロナの働き方のトレンドとその打ち手を読む!

Meeit.bizが送る日本人向けオンラインセミナー。今回のテーマは「ポストコロナの働き方のトレンドとその打ち手を読む!」。長引くCOVID-19の影響下で多くの企業は、リモートワークを中心とした新しい就業形態へと半ば強制的にシフトしてきました。こうした中、リモートワークならではの新たな課題も浮き彫りになってきています。

本セミナーでは、ASEAN全域の日系企業への組織・人事コンサルティングの実績を多く持つデロイト・コンサルティングの​​シニア・マネージャー、南知宏​​氏をお招きし、ニューノーマルな働き方を安定して導入・運用するためのマインドセットや具体的な方法を解説していただきました。また、今回はポール機能を使用し、視聴者の皆さまの現状を把握しながら進める視聴者参加型のインタラクティブなセミナーとなりました。

|タイにおける With コロナの社会・経済

まずはじめに、COVID-19のパンデミックの状況下における経済や社会の影響はどうなっているのかデータを読みながら全体像を次のように南氏は解説します。

これまでASEANの中で、COVID-19対策において優等生だったタイ。しかし、今年の4月頃から状況が悪化し、直近の新規感染者数の増加は著しく、ASEAN域内ではインドネシアやマレーシアと並びトップクラスの悪化状況となっています。ワクチン接種も徐々に進みつつあるものの、集団免疫が獲得できるとされるワクチン普及率60-70%まで達するには、タイは2022年もしくは2023年までかかると言われています。​​

タイにおけるWithコロナの社会・経済

まだまだ回復の兆しが見えないという企業がある一方で、回復に向かっている企業もあります。例えば、自動車業界は、COVID-19がスタートした2019年から2020年はこれまでにないくらいの落ち込みを見せたものの、すでに回復傾向にあり、2023年には2019年レベルまで復活すると見込まれています。一方で半導体業界のマーケットは、米中の貿易摩擦のあった2019年に落ち込んだものの、コロナ禍では在宅勤務やオンライン事業によりネットワーク機器の需要が増えたこと、5Gが加速したことなどから購買意欲が上がり、市場自体が伸びています。

このように業界全体を見渡してみるとまだら模様な経済回復で、国や業界によっても回復に要する時間も異なることが予想されます。

|With コロナの組織・人事的な課題

COVID-19からの景気回復には少なくともまだ1年はかかると見込まれています。しかし、立ち止まっている訳にはいきません。2022年以降、復活していく兆しがあるということを見越して、今企業としてやらなければいけないこと、あるいは各社が共通してやろうとしていることとは何か。それは「リーンな組織作り」。

リーンとは、痩せた、引き締まったという意味。また生産方式や企業で無駄を排したさま。要は「無駄のない(余分な要員や人件費が発生しないよう管理できる体制作り)、けれども筋肉質の(高度かつ柔軟な働き方のできる人材の育成)」カラダ作りです。実はリーンな組織作りは、COVID-19のパンデミック以前からあった話で新しい話ではありませんが、今は待ったなしの状況。一部の日系企業は本気で作り始めています。

With コロナの組織・人事的な課題

組織や人事を考えるにあたっては無駄のないカラダと筋肉質のカラダのどちらも重要。人材を育成するには、投資やお金がかかりますが、お金をかけすぎても意味がありません。適度なところで人件費を抑制していく、そのバランスをとるのが人事の妙。そして両方をクイックで求められるレベルまで高めていくことが大切なのだと南氏は言います。

では「無駄のないカラダ」と「筋肉質のカラダ」に必要な施策とは何か。それぞれ4つの具体例を挙げていきます。

<「無駄のないカラダ」作りに必要な施策>

まず1つ目に挙げられるのが、「統括機能・人事機能の見直しと統合」。例えば、一つの国もしくは域内に複数の拠点を持つ企業は、人事機能を一つにまとめるなどして、バックオフィスを効率化すること。これにより人数だけでなく業務も均一なサービスを提供できるようになるので、最近では特に自動車業界を中心にこの動きが見られます。2つ目は「要員計画の高度化」。これも以前から言われてきた課題です。製造なら製造、バックオフィスならバックオフィス、セールスならセールスで本当に必要な要員数を洗い出します。3つ目は「要員調整の実行」。これは2つ目で作った要員計画を実行することで、基本的に人員削減を意味します。ただし、いきなり整理解雇をするのではなく人員を減らすためのあるべき考え方を整理して、段階的に何人ずつ、どのような方法で減らしていくのかなど具体策を実行していく必要があります。そして最後は、「基幹人事制度(報酬制度)の見直しと労組管理強化」。1〜3は人員の数の話でしたが、4つ目は単価の話になります。明らかに給与の高い管理職以上は今までのような一律での昇給制度を見直し、その代わり低賃金で働いているワーカーの人たちの賃金を少し手厚くしていく。その結果、彼らの生活レベルをあげて、タイの社会に貢献していくというのが現在の在タイ日系企業のトレンドです。

<「筋肉質のカラダ」作りに必要な施策>

次に、「筋肉質のカラダ」作り(高度な専門性だけではなく、柔軟なアサインを可能とする幅広な対応力のある社員作り)に必要な施策とは何か。1つ目は「基幹人事制度の見直し」です。これは、人材運用の効率性を高めるべく今まで求められてきた専門性からより幅広のスキルセット、あるいは幅広のアサインメントでローテーションを可能にしていくような人事制度の見直しです。基幹人事制度の見直しをやろうとすると2つ目の「人材育成体系の設計」、つまり求める人材要件の高度化に合わせた育成手法の導入と採用手法を見直しすることにもなり、ひいては本セミナーのテーマである3つ目の「新しい働き方の定着」にも繋がります。4つ目は「後継者計画の策定」。専門性だけでなく幅広の経験値をもった柔軟かつしなやかな人材こそが会社のトップを担っていくという後継者計画のロールモデルを作る。これが最後の仕上げとしてあります。

|新しい働き方の定着化

COVID-19の影響による社会・経済の変化、さらにCOVID-19により浮き彫りとなった組織・人事的な課題をふまえ、最後は本セミナーのテーマである「新しい働き方の定着化」についてです。

南氏が所属するデロイト社の最新の調査によると、タイの各業界のトップ10位以内の大手企業の70%がリモートワークを導入しています。特に導入が顕著だったのが金融やBtoCメーカー。逆に不動産やエネルギー系は低調。また、この調査結果からタイの大手企業ではリモートワークは導入が進んでおり、今後も恒常的に使っていこうという流れはあるものの、日本と違ってリモートワーク化を通じてフリーアドレスやオフィス削減、処遇の見直し、人件費削減という流れにはなっていないという一つの特徴が見られました。

南氏は「新しい働き方の定着化」にあたり具体的な方法について3つのポイントを以下のように続けます。
1つ目は「リモートワークを高度化するコツ」。まずリモートワークには準備が必要です。これは物理的な準備だけでなく、マインドセットの持ち方にも言えます。バーチャルワークの原則として、在宅勤務では仕事とプライベートが混在します。そうした中で考えるべきは成果主義。要は仕事でやるべきことをやれば就業時間というのは基本的には各人に任せるスタンスにならざるを得ないということ。また、ドアを閉める、他者とのつながりを持つ、休憩を適度にとるなど働きやすい環境設計も重要です。もちろん機密情報や個人情報保護のためのセキュリティ対策も各メンバーに徹底させる必要があります。

新しい働き方の定着化

さらに新しいチームの形も考えなければなりません。チームで仕事をしていく上で、オフィスで働いていた時のような画一的な働き方はリモートワーク下では通用しません。上司は個々のメンバーに合わせたマネジメントが求められます。例えば今までは顔を合わせていれば阿吽の呼吸で対応できていたこともお互いが見えない状況下では、「すぐに対応して」という一つの指示においても「すぐ」という言葉は人によって捉え方が異なるため、言葉も細かく定義しないといけなくなります。そして、メールやチャットツールだけでなく、同期コミュニケーションツールやコラボレーションツール、共有ファイルなどのデジタルツールの活用も欠かせません。バーチャルミーティングでは、進行役、書記など役割を決めて、各人がその役割を遂行することも重要です。一方でバーチャルワーク環境は新しい可能性をもたらします。よりよいパフォーマンスを発揮するためにも食べる、動く、水分をとる、眠る、ログオフするなどメリハリをつけて、自分自身のウェルビーイングを保つことも大切にしなければいけません。

2つ目は「新しい評価の考え方」です。遠隔で仕事をする上で、顔が見えないのにどのように評価をしていくのか。今までは詳細に、正確に評価をしていくことに重点が置かれた仕組みでしたが、これからは評価の頻度をあげる代わりに評価項目を簡略化し、タイムリーにフィードバックをしていくこと、これがメンバーの育成にも繋がります。しかし、普段から声をかけずに評価することは不可能です。それはリモート環境でも同じです。むしろリモート環境では、ミーティングや個別セッションなど意識的に普段の接点やコミュニケーションの頻度を高くして、評価とフィードバックをリアルタイムにしていくことで本人の満足度や納得度を高めていくというところがキーポイントとなります。リモートで従業員のパフォーマンスを管理するためには、​​育成・評価の状況やエンゲージメントを可視化するためのツールを活用​​していくことも有効な手立てとなるでしょう。

新しい働き方の定着化

最後は「新しい出向形態」について。現在日本の企業ではCOVID-19の影響で移動ができなくなったため遠隔での出向が検討されはじめています。クロスボーダーアサインメントのリモート化には多くの経営的メリットがあります。例えば、より多くの人材へ柔軟な海外アサインメントを付与できるようになる「人繰り力」の向上や結婚・育児・介護など各家庭のライフイベントで海外赴任が物理的に難しい従業員もリモート出向なら対応できるようになります。また、海外赴任のコスト削減やCOVID-19対策をはじめ、リモートによる海外メンバーの本社ポジションのアサインがしやすくなり本社の国際化を加速するなどのメリットもあります。
ただし、リモート出向では、企画の段階で業務のこと、人材のスキルやキャリアモデル、働く場所を勘案しながら、人・組織、国際税務、インフラ・セキュリティ、労務問題など乗り越えていかなければならない課題も多くあります。こうした課題を乗り越えながら、出向者を廃止するのか、簡素化するのか、役割を変えるのか、自動化するのか、リモートにするのかなど業務のタイプごとに分けて検討する必要があります。このような新しい形態は実際に一部の企業ではすでにスタートしています。

一例として、一般的にはオンサイトと考えられがちな製造現場において、これまでは問題が起きた時は、現地へ行って対応を行っていましたが、移動そのものが難しくなった今、カメラ映像やセンサーなどのIoT技術を利用して管理業務を行ったり、技術伝承そのものを遠隔化し、日本から指示するといった新しい取り組みも導入されはじめています。

|リモートワークならではの悩みに解決策を

本セミナー最後の質問コーナーでは、リモートワークならではの部下とのコミュニケーションのとり方、働き方の難しさを考えさせられる質問が寄せられました。

リモートワークならではの悩みに解決策を回答します

ある視聴者は、「就業時間中にスタッフにメールやチャットで連絡しても返信がなかったり、就業時間外になってから連絡がくることにストレスを感じており、このような場合評価主義にしたらどうなるのか」という問いを投げかけました。この質問に対して南氏は2つのポイントについて解説。「まずルール作り。業務時間については、基本の就業時間を明示した上で、いつ対応するかは状況に応じて本人に任せる。ただし就業時間外のメール対応はしないなどのルールを決めること」。これはまさに先ほど述べた「リモートワークを高度化するコツ」で説明した内容です。次に成果主義について、南氏は「遠隔になっている状態では成果主義にならざるを得ない。管理職の人は遠隔で部下に仕事をさせる場合は、いわゆるWBS(Work Breakdown Stracture)でガントチャートを作るくらい、今までよりも作業を細かく分割して、どのタスクをいつまでにやっていくかの指示を出していく必要がある。これを毎日、もしくは成熟度が高い人であれば1週間に1回フォローアップしていく、そうして成果がちゃんとでているかの確認が重要となってきます」と述べました。

また別の視聴者からは「リモートワーク時に社員本人の自己申告とは別にITシステムを利用して実際の勤務時間を自動で把握する仕組みはあるか」とう質問が入りました。​​この質問に対して、南氏はPCが立ち上がった時間、もしくはオペレーションが開始した時間を自動的にカウントするやり方はあるとした上で、リモートワーク下において、パフォーマンスを時間で見るか、成果で見るか、は仕事の性質にもよるが、議論の対象になるところと付け加えました。

今回の南氏のお話の中には、働き方の多様化が加速する中で、ニューノーマルな働き方を定着させるための重要なポイントが詰まっていました。まずは、私たち一人一人のマインドセットの持ち方を見つめ直し、そこから試行錯誤して各々にあった正解を見つけていくということが今まさに試されているのかもしれません。

本セミナーの最後に南氏は視聴者に向けて次のように締めくくりました。「自分も含めニューノーマルな環境には苦労しています。ただその中で新しい道は必ずあるので、実践しながら、いい解決方法を色々議論しながら一緒に模索できればと思っています。1種類のパターンで、これで大丈夫という方法は絶対にないと思っていますので、気兼ねなくご相談いただければ嬉しいです。」

これまで多くの企業の課題と向き合ってきた南氏らしい率直で真摯な言葉でした。

Meeit.bizでは、これからも皆さまのご意見やご希望を踏まえて、さらに充実した内容のウェビナーを企画してまいります。今後もMeeit.bizの取り組みにぜひご期待ください。

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