2020.06.08

【セミナー開催レポート】2020年5月8日開催、 日本人駐在員向けオンラインセミナー開催

Meeit.bizが送る日本人向けオンラインセミナー。今回は5月8日に開催された「COVID-19に関する労務・法務対応Q&A」の内容をご紹介します。

COVID-19の感染拡大はさまざまな深刻な問題を喚起しています。とりわけ労務や法務に関して頭を抱えた企業は多かったようです。そこで、このウェビナーでは、スピーカーとして公認会計士の西川和輝氏、社会保険労務士・米国公認会計士の長澤直毅氏、弁護士・弁理士の永田貴久氏の3人の専門家をお招きしました。誰もが知りたいCOVID-19に関する労務・法務問題について専門家が鋭く的確に解説します。

|株主総会は延期できる? 必要な手続きは?

法務関連でもっとも多く寄せられたのが株主総会に関する質問です。12月決算の会社は4月末までに株主総会を開催しなければなりませんが、ご存知のように、現在は日本からタイに来ることはほぼ不可能。さて、どんな解決策があるのでしょうか。弁護士の永田氏はこう答えます。

「開催の延期自体は問題ありません。ただし、株主総会開催後14日以内になぜ予定通り開催できなかったかという遅延理由を記載した書面を提出する必要があります。電子会議での開催については、これまで全員がタイにいる必要がありましたが、今回、要件が緩和されて、開催できるようになりました。ただし、事前に出席者前人の本人確認を行い、音声や映像を電子データ形式で記録・保管し、書面で議事録を作成することが必要です。また、公開投票や秘密投票の両方に対応できるように手配し、デジタル経済社会省作成のセキュリティ基準に則ってください。電子データ形式での記録・保管についてはまだ具体的にどういったものが必要になるかははっきりしていませんが、サーバに記録されたアクセス記録で問題ないでしょう。可能な限り、サーバのアクセス記録を残しましょう」

|電子データの署名は有効なのか、原本はPDFでいい?

次に多く寄せられたのが署名に関する質問です。はたして電子データでいいのか、適用範囲があるのか。悩める企業担当者に永田氏は次のように答えます。

「原則としてすべての書類は電子データでの署名が可能です。署名を画像のようにしてそれを書類に貼る形でも、実際に署名した書類をPDF化してもどちらでも構いません。社印についても同様です。とはいえ、裁判など紛争になったときに有効性が否定される可能性があるかもしれません。契約書については、電子署名サービスを利用するといいでしょう。なお、行政や銀行などで手続きする場合、担当官によっては電子署名が拒否されるケースも考えられます。ケースバイケースの発想で、柔軟に対応されることをお勧めします」

導入している請求書や領収書の電子版であるE-インボイスやEーレシートについて、担当官から根拠となる資料として原本を求められたらどうすればいいのでしょう。

「もし求められたとしても、電子データだけの保存で済む書類であれば、大きな問題にはならないでしょう。受発注の書類などは、税務調査において原本を提示できないからといって追徴課税となることは考えにくいっです。電子保存しても大過はないと考えます」

|納期に遅れたら損害賠償は発生する?

COVID-19の影響でやむを得ず、納期に遅れてしまったー。これもよくあるケースです。このとき、企業は損害賠償等の責任を負うことになるのでしょうか。永田氏はまず契約書に記載されている不可抗力免責条項の確認を勧めます。

「納期遅れが、COVID-19の影響で避けられないものであったか否か。これによって結論は異なりますが、まずは納期遅れが条項記載の定義にあたるか否かをチェックしましょう。契約書がない、あるいは契約書に不可抗力免責の条項がない場合、タイ法に準拠するとすれば免責の主張ができる可能性があります。ほかに問題になりえるのは、事業所の閉鎖や原料が入荷できなかったために納期に遅れたという債務不履行です。タイの民商法典には債務不履行に関する条文がありますが、基本はケースバイケースだと考えてください」

|時短勤務だから減給できる?手当はどうなる?

次は労務に関する質問に長澤氏が答えます。労務関連の相談は非常に多く、特に集中していたのが、数時間勤務の場合に給与をどう考えればいいのかという内容でした。

「タイに限らずノーワークノーペイという考え方がありますが、月給者については勤務時間が少なくなった場合でも同意なく減給することは難しいと考えてください。通勤手当のように毎月固定で支払っている手当については、在宅勤務であっても支払いは必要です。皆勤手当については、在宅勤務を想定しているケースは少ないと思いますが、支払うべきだと考えられます。会社の都合で出社を減らしている場合も同様です。今後は従業員の同意を得た上でこうしたルールを見直していく必要があるでしょう」

従業員が葬式や結婚式などに出席し、感染者との接触の可能性が高かったーー。そうした理由で従業員に休暇を求めたときには、休業補償は必要になるのでしょうか。

「休業補償は大きく分けて、不可抗力による休業と、通常の業務運営が困難な理由があって、かつ事前に労働局に届け出をした上での休業の2つがあります。前者は会社側に賃金の補償の必要はありませんが、後者は75%の賃金保障が必要です。ご質問のケースでは、不可抗力や一時休業が認められる状況とも考えづらいので、100%の賃金保障が必要になるでしょう。ただし、従業員の同意の上で年次有給休暇や病気休暇の消化をすることは可能だと考えられます。もし従業員が感染したら、会社が14日間の閉鎖を余儀なくされますが、これは不可抗力と考えられるので、会社側に賃金保障の義務は発生しません」

|解雇したい、そのとき必要な手続きは?

解雇関係も関心が高いテーマです。操業を維持できそうにないので、解雇に踏み切りたい。そのとき、企業はどんな点に注意すればいいのでしょうか。

「解雇には、解雇補償金や損害賠償が必要な不当解雇、正当な理由がある解雇、懲戒解雇の3つがあります。COVID-19関連では経済的な理由で解雇するケースが多いと思いますが、その際、正当な解雇なのか不当解雇になるのかが大きな分かれ目。損害賠償の有無が重要なポイントになります。利益の減少を理由にすると、不当解雇とされかねません。このあたりの線引は非常に微妙ですね。労働裁判を起こされないように注意して、事前の通知や最低限、法律で定められている解雇補償金の支払い、有給の買取などは必要だと考えてください」

では、懲戒解雇をする場合にはどんな手続きが必要になるのでしょう。長澤氏は具体的に説明します。

「懲戒解雇は、意図的に会社に損害を与えたか、就業規則違反に分けられます。後者が多いと思われますが、軽微なものについては警告書を複数出すと解雇が有効になります。ただし、解雇として通用するように警告書を整えることが重要です。具体的には、2枚め以降の警告書の中で、前に出したレターにおいても同様の理由で警告書を出しているということを明記すること。労働者保護法119条の記載をして、解雇補償金の支払いをせずに懲戒解雇とすることを伝えることも必要です。また、補償金などの一切の金銭の要求をしないことも盛り込んでください」

懲戒解雇ではなく、本人と退職の条件を決めた上で合意する合意退職についてはどうでしょうか。事後に会社を訴えないという誓約書にサインをもらった場合、それが法的に有効なのかを気に病む企業担当者は多いようですが、長澤氏はずばりこう答えます。

「強制的、物理的にサインさせたものは認められませんが、合意の上でサインをもらった場合には判例が出ているので、有効です。なお、不当解雇の損害賠償金の相場は、一般的には勤続年数によって1年あたり1ヶ月分で、ここにもう少し上乗せするのが相場です。裁判によってこの数字は変わってくるので、合意退職として先の数字を目安にし、最初から損害賠償金分を支払っておけば訴訟リスクは減るでしょう」

|特定の部署だけを休業させたい

会社全体での休業ではなく、ある部署だけを休業する、あるいは特定の人だけの休業を検討している企業は少なくありません。果たしてそれは可能なのか。長澤氏の回答を聞きましょう。

「重大な理由で勤務継続が難しいと認められれば、一部の部署の休業は可能となります。しかし、個人から自分の業務については重大な理由には当たらないと主張をされた場合には休業補償が認められず、全額での補償が必要となる可能性があるので注意しましょう。ちなみに、一時休業する場合、必ずしも従業員の同意を要する手続きは必要ありません。とはいえ、業務変更に伴う減給や手当不支給については、最低限、同意を得ることは必要です。従業員に対する休業補償の内容については日々情報が変更されるので、情報のキャッチアップが欠かせません」

|日給者は減額できる?ボーナスを減らすことは可能?

さて、ここからは質問タイム。オンラインで参加者からいくつもの質問が飛び込ました。その一つが、日給者に時短を要請する場合、ノーワークノーペイに基づいて減給は可能かという質問です。企業にとっては気になる点でしょう。長澤氏は言います。

「これは契約形態に依存します。一般に時間については規定していないことが多いのですが、日給者であっても、月の勤務時間が固定されている場合などは支給額を減額することは可能です。同意がない場合、出勤調整で給与の減額ができませんが、もし、本人の合意を取っていて、例えば75%の給与を支払い、かつ出勤調整をしているのであれば、問題はありません」

COVID-19の影響で業績が悪化し、ボーナスを減額もしくは中止したいという企業は多いでしょう。これが可能か否かは、就業規則や雇用契約、募集要項に最低◯ヶ月などを入れているかどうかによるといいます。

「就業規則に支払いをしない、あるいは減額の可能性があると触れている場合には可能です。下限額については特に法律で決まっていません。個別での規定になります。組合がある場合には組合との交渉になりますね。給与についても、特に減給の下限額は法的に決まっていません。従業員との合意の中で決まります」

こんな質問も寄せられました。一時休業中に社員が有給を取得した場合には、賃金は75%支給なのか、あるいは100%支払わなければならないのか。長澤氏の回答を聞きましょう。

「一時休業は何日から何日と指定しているので、その間に有給を取ることはないと思いますが、その部分は通常の出勤をしていることになるので、もとの100%の給与がベースになります。ただし、傷病休暇については、休業扱いでそもそも出社できませんから、取得申請自体ができないと考えられます」

|日本人の役員報酬の減額はできるのか

いま、売掛金の回収ができないという悲鳴が多くの企業からあがっています。しかし、タイ政府側がこれに対して保証をするという話は出ていません。なにか打つ手はないのでしょうか。

「売掛金の回収ができなくて倒産するしかないのか。そんな相談は多いです。残念ながら現状、取引先の破綻による保障はありません。ただ、融資であれば無利息のものが用意されています。整理解雇は必要があれば認められますから、リストラをするのも一つの打開策かもしれません」

この状況下で日本人の役員報酬の減額は可能なのか。シビアな質問も寄せられました。

「日本側では、役員報酬は期中に変更はできません。対して、タイの場合は明確な規定がないんですね。損金について問題になることもありませんが、月によってあまりに増減が激しいと意図的に調整していると見られるので注意が必要です。あとは役員との契約の内容次第でしょう」

|派遣元から賃金が払われていない派遣社員を引き抜きたい

家族の不幸で従業員が実家に帰り、再びバンコクに戻ったとき、はたして強制的に休ませられるのか。こんな質問も飛び出しました。

「強制するのは難しいですね。あくまでも会社のルールとして決めていただく必要があります。その場合には、基本的には有給休暇の取得を優先的にしてもらい、それが終わった後は、月給者については会社側に補償義務はあるでしょう。ただし、政府の命令でそもそも外には出られないという場合には不可抗力になるので、会社側の休業補償義務はありません」

ラストの質問は派遣社員に関する内容です。派遣元から給与が払われていない派遣社員を引き抜いたらどうなるのかという質問です。さて、長澤氏の回答は?

「派遣社員の救済のために社員にする場合、派遣元との契約は生きていますから、ペナルティ条項が入っているかどうかですね。引き抜いた場合には、支払請求が派遣元から来る可能性は否定できません。未払いを指摘して派遣元と新たな覚書をするとリスクが軽減すると思います」

|90%が「よかった」と評価

さて、労務法務のプロ集団の回答はいかがでしたか。ウェビナー終了後のアンケートでは、「とても良かった」「良かった」を合わせると約90%。多くの方から好評を持って受け止められました。

今後の開催テーマについても、個人情報保護法や新法令、労務関係、役員会や株主総会のWEB会議など、たくさんのご希望をいただきました。皆さまのご意見やご希望を踏まえて、さらに充実した内容のウェビナーを企画していきます。今後のMeeit.bizの取り組みにぜひご期待ください。

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