2020.06.08

【セミナー開催レポート】2020年5月19日開催、 日本人駐在員向けオンラインセミナー開催

Meeit.bizが送る日本人向けセミナー。今回は5月19日に開催された「日本とタイでつくる、製造業の未来:COVID-19がもたらす事業活動への影響と今後」です。COVID-19はタイの製造業の事業活動にどのような影響をもたらすのでしょうか。製造業はいかにしてコロナ禍を乗り越えるべきなのか。タイ製造業に精通する一迫守氏が解説します。

|2019年のタイの製造業を振り返る

COVID-19の影響で、いま多くの製造業が生産停止や縮小を余儀なくされています。トヨタも4月7日〜17日まで生産を一時停止しました。製造業がかつての水準に戻る日は来るのか、それともー!? 一迫氏は、まず2019年のタイの製造業を振り返ります。

「以前はタイに進出した日系企業は系列の中でビジネスが閉じていましたが完結していましたが、競争が非常に厳しくなり、いまや中小企業は自社で営業をせざるを得ません。特に2014年頃からその傾向が強まりました。現地化のニーズが高まり、タイ人の中間管理職を育成しようという機運が勢いを増しています。製造業全般としては、米中貿易戦争の余波が押し寄せ、決して好調ではありません。暗雲が立ち込めたタイの製造業にとどめを刺すかのように起きたのが、COVID-19の感染拡大です」

しかし、ネガティブな話題ばかりではありません。トヨタのEVやPHV生産計画にタイ政府の認可がおり、タイの工業団地大手WHAは今年の土地販売目標を堅持しました。三菱自動車のEV生産計画はタイの投資委員会から承認され、三菱ガス化学が電子材料の生産能力増強へ向けて動き始め、自動車会社のプロモーションも活発化しています。

「コロナに端を発した急速な自動車のタイ国内売上減により、トヨタは金利を下げ、5万4,000バーツ分のディスカウントを行っています。ボルボも6ヶ月は無料という販促策を打ち出しました。BMWの取り組みも注目されます。オンラインショップで購入すると、支払いは来年からでいいというプロモーションです。自動車会社はどこも在庫を減らす取り組みを熱心に展開していますね。一方CPグループと中国の自動車大手、上海汽車との合弁会社が生産しているMGブランドの車も好調ですよ。ここ半年で首位に立った。これからは、グレートウォールモーター(長城汽車)社グレートウォールも要注目。米国のGMはタイから撤退しましたが、今後は中国の自動車会社も取引のも選択肢になってくるでしょう」

|為替変動は製造業を左右する

次に一迫氏はタイの製造業に影響を与える因子について解説しました。

「タイにおける製造業はこれまで5つの転機がありました。アジア通貨危機、リーマンショック、洪水、超円高。そして今回のCOVID-19です。COVID-19の影響は非常に大きいですが、為替変動のインパクトも見逃せません。超円高になったときに、日産マーチはすべてタイでの生産に切り替えましたが、円安基調になると日本に戻した。製造業に為替が与える影響は甚大です」

市場での競合、コスト、展開国の法規制や税務、人材、資材の動向、米中貿易戦争に代表されるような国家間の貿易事情など、製造業を揺り動かすファクターは枚挙にいとまがありません。その中で、一迫氏は今回のCOVID-19は天災に近いと指摘します。

「COVID-19によって需要が低迷している業種はたくさんあります。例えば、メイクアップ化粧品。外に出ないし、出るときにはマスクをするので口紅や日焼け止めの需要が落ちています。一方で、ゲームなど玩具、室内スポーツ用品の需要は伸びているし、家で料理をする人が増えて、家電製品も調子がいい。リモートワークやオンライン飲み会が普及し、PCやタブレットなどIT関連製品も伸びています。とはいえ、ニューノーマルの生活様式の中で、これからどういった業種の製造業が伸び、どんな製品の需要が高まるのかは混沌としている。神のみぞ知る、といってもいいかもしれません」

|コロナ禍に強い企業の事例3社

製造業がどのような未来を描いていくのか。予測は困難ですが、生き残りを図る企業にとってヒントになる事例はあります。タイの製造業に関する豊富な知見やネットワークを持つ一迫氏は参考になる3社の事例を挙げました。

「一つは、付加価値市場を追い続けたローカルの製造業の例です。治具や機械部品、金型を量産しているこの製造業は、いまも売上が順調に伸びています。なぜかといえば、この会社はカメレオン型経営なんですね。2006年までは売上はほぼ日系企業で占められていましたが、2018年時点では欧米企業が主な顧客です」

日系企業の勢いが弱まりそうだと見れば、すかさず対象顧客を変える。環境に合わせ、市場に合わせ、状況に合わせて自社を変えることができる企業は強いのです。

さらに、一迫氏はパーツや金型を作る日系のメーカーの例も紹介します。

「この会社は、日本、中国、ベトナム、タイの4カ国で事業を展開しています。事業分野は自動車、一般消費剤、医療関係、危機管理剤の4分野。業績が落ち込んでいる分野もありますが、今年もトータルで営業利益は上昇する見込みです。3社目は、ローカルの部品メーカーです。これまでは自動車向けが全体の30%を占めていますが、数年前から力を入れてきた医療関係の部品が業績アップに貢献しています。タイ人の営業もプラス材料ですね。古株のタイ人がすでにマネージャーとして活躍していて、権限がかなりタイ人に移行しているんです。タイ人が営業に行き、販路開拓を行っている。この効果は大きいです」

|横展開を行い、リスクヘッジに努めよう

さて、一迫氏が挙げた3つの事例には共通点があることにお気づきでしょうか。それは、事業の多角化です。持ち味や強みを生かして横展開を行い、リスクヘッジに努めています。

「もちろん、会社によってポリシーや方針も違いますから絶対の正解とは言い切れませんが、事業が複数あると何かあったときに強い。最後に挙げた会社のように、タイ人を活用している企業もピンチのときには強いです。ある日系のプレス関係の会社では、従来、建築材関係が本業でしたが、現在は白物家電の仕事が非常に増えています。これはタイ人が営業して仕事を獲得したからです。裏からマネージしているのは日本人でも、表で動いているのはタイ人という会社は多い。特に大手はそうなってきましたね」

日頃の地道な営業活動が大きなピンチに生きてくる。そんな成功例もあるといいます。

「自動省力機の設計製造を手掛けている日系のメーカーの例ですが、いまキャパオーバーに近い量の仕事が入っています。ここは、生産が落ち込んで仕事がなかったときでもお客さんに連絡を取り続けて、ずっと提案を行ってきた。言うは易く行うは難しで、仕事がなくてもお客さんのもとに通い続けるのは決して楽なことではありません。タフではないとやれませんが、だからこそ今回のような事態で生きてくるんですね」

|タイ企業との連携は不可欠

これから、世界はCOVID-19と共存する生活を強いられます。その中で、一迫氏が紹介した事例を一つのヒントにしながら、製造業はいかに活路を切り開いていくべきなのでしょうか。

「繰り返しになりますが、万能薬はありません。百社あれば百パターンの道筋がある。重要なのは、自ら情報収集し、自ら判断し、自ら行動すること。自社の中長期的ビジョンを踏まえて市場と自社の強みとのマッチングを追求しましょう。それが、パラダイムシフトへの構えになる。ただし、それは日本企業単独では難しい。タイ企業との連携が必要な場合も多く存在しますです」

タイ企業と連携することで自らの力をいかんなく発揮し、市場で存在感を高めている例として、一迫氏はCC.C.Kendenshaの例を挙げます。

「島根県の研電社は、タイのC.C.Autopart社と共同出資でC.C.Kendenshaを設立しました。研電社の環境改善技術と、C.C.Autopart社の技術力やネットワークを生かして、目詰まりしない排水処理機をタイで製造販売し、事業を軌道に乗せています。日本は技術や良い製品をもちながら事業継承に悩む中小企業が少なくありません。そうした企業にとって、タイは有効な選択肢。需要があり、技術があり、工場があり、場所や機会、人材もいる。ローカル企業なので法規制の制約もありません。お互いの凹凸、長所短所を補完できる連携をぜひ模索してほしいですね」

もう一つ、一迫氏が強調するのが、本社の理解の重要性です。本社の理解なしに、異国の地でビジネスをスムーズに運営できるはずがありません。

「オーナー企業であれば、タイに足を運んで実態を知ることが必須。国特有の事情を自らが理解する姿勢が欠かせません。駐在員であれば、タイ人を理解することも必要です。タイ語も覚えてほしいですね。『マイペンライ』の一言にどれだけの意味があるのかを知ってほしい。タイ人を知り、タイの文化も理解しましょう。日本人だけの世界にとどまるのではなく、ぜひタイ人との接点を増やしてほしいですね」

一迫氏とタイの製造業との接点は1984年に生まれました。それから36年。タイに進出している日本の製造業、タイローカルの製造業を深く知る一迫氏だからこその助言です。

|タイプラスワンの流れは加速するのか

質問タイムでは、「タイプラス1」の流れは今後どうなるのか、という質問が寄せられました。

「COVID-19に対するタイの対策は非常に優れていました。タイの優秀さが広く認知され、世界的にもかなり評価されています。ベトナムの注目度は上っていますが、製造業の基盤がしっかりとしているタイと比べるとインフラがまだ弱い。COVID-19をコントロールできたことと合わせて、『やっぱりタイだよね』という声が高まっています。タイプラス1の動きは加速すると思います」

COVID-19によって、グローバルなサプライチェーンは大きな打撃を受けました。今後は、サプライチェーンがローカライズの方向に進むことはあり得るのか。そんな質問も飛び出しました。

「そうした動きは確かにあります。ただし、ヘッジしないと怖いことも事実。価格では中国に勝てませんが、今後はヘッジしてタイを選ぶ流れが強まる可能性は十分あると思っています。ベトナムも選択肢の一つでしょう」

セミナー終了後のアンケートでは、参加者の約75%から「良かった」との評価が届きました。タイ製造業のリアルな動向がわかった、具体例がわかりやすく腑に落ちたとの声も多く、参加者にはたくさんのヒントを受け取っていただいたようです。これからも、皆さまのご意見やご希望を踏まえて、さらに充実した内容のウェビナーを企画していきます。今後のMeeit.bizの取り組みにぜひご期待ください。

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